11月14日(水) スペイン国王フェリペ2世に会いに行く
使節はスペイン国王との謁見のため、インドで作らせた肌着の上に、日本の着物を着用した。その生地は絹でできており、白地に花鳥や木の葉の形を織り込んだ美しいものだった。袴も同じ絹地で、同じ色のものを着用し、足袋と草履を履いた。腰には大刀・小刀を差し、さらに、スペインの風習に倣い、インド風の帽子を用いた。
国王の遣わした馬車に乗り込み、宮殿に向かったが、外から見えないように扉は閉ざしてあった。それにも関わらず、宮殿の前には人が集まり、馬車を降りて進めないほどだったので、侍従や護衛兵がかろうじて道を開け、宮殿に入った。
使節は国王の寝所や食堂を過ぎ、奥の広間に案内された。そこではマントを着用し、剣を帯びた国王と、王子や王女が待っていた。
そこで4人そろって礼をしたあと、マンショとミゲルが大友・有馬・大村三侯の書簡を献上し、日本語で読み上げたあと、メスキータが通訳した。
使節は国王に日本からの土産物を献上したあと、国王の手に接吻しようとしたが、国王はこれをさせず、彼ら一人一人を親しみをもって抱擁した。王子や王女もこれに倣った。
その後、国王は日本や使節の健康状態について質問したり、着物のことを話したりして、使節とともに1時間ほど過ごした。
最後に、国王は、自分の小聖堂で夕の祈りがあるので参列したいかと尋ね、使節が参列の希望を伝えると、聖堂に案内させた。
聖堂ではすでに聖歌隊が二手に分かれて待っていた。使節一行の席は、祭壇の近くに設けられていた。