恋風旅路 >> 恋風旅日記 >> 長崎・熊本旅日記 >> 2日目


+2日目+(口之津〜天草下島)

〜よろしく〜
今日もよく晴れてる!朝の準備が早くできたら海に行きたいと思っていたのだが、何かにつけ行動が遅い私が早くできるわけがない。朝ご飯をゆっくり食べていたらあっという間にバスの時間。浜遊び断念。ウゥ…。母からはまたおかしなメールが来ていた。
「今日は 熊本へ行くの シローによろしく」

〜街灯がこってる〜

口之津の街灯
口之津の街灯。かわいい

9時過ぎの口之津駅前行きバスに乗るため、バス停へ。今気がついたけど、口之津の街灯の形は船なんですね〜。南蛮船来航の地にちなんで船の形にしてあるのかな。とてもかわいらしくて気に入りました。ついでに「キリシタン史跡」の看板も発見。昨年、惜しくもデジカメ撮影できなかった私のお気に入りの看板です。かっこいいエンブレムがくっついてるの。

キリシタン墓碑案内版
こちらがキリシタン史跡の看板。
↓エンブレム拡大。
エンブレム拡大

〜微妙なカルチャーショック〜
バス停におばあさんがいたので、ちょっと挨拶。おばあさんかっこいい〜、昔のジャノメ傘を日傘がわりにさしてる。なんか…粋だよなあ。バスに乗り込み、口之津へ。途中で降りていった別のおばあさんも、日傘をさしておられた。なんかおしゃれだ。私の地元では日傘をさすお年寄りはほとんど見かけないので、ちょっと新鮮に感じた。

〜フェリー乗り場の地図まで用意していた〜
終点の口之津駅前で下車。駅前だけど、降りた場所はフェリー乗り場の建物の前。道の反対側が口之津駅になってます。フェリー乗り場の位置をやたら心配していた私。よかった〜。フェリーの時間まで少しあるので、これから南蛮船来航の地跡に行ってみることに。ヴァリニャーノが来たところだもんね、やっぱり行っておかなくては。外で地図を見ていると、フェリー乗り場の従業員のおばさんが声をかけてきた。

〜意外に好評みたい〜
「あの〜…すみません、つかぬことをお伺いしますが」
おばさんちょっと気まずそう。
「そのカバン、どこで買ったんですか?」
??…私の旅行カバンのことをおっしゃってるようだ。
「あ、私埼玉から来たんですけど、地元のスーパーで買ったんですよ」
「あらぁ、埼玉…そのカバンすごく可愛いと思って」
私のカバンがとても気に入ったらしい。もう1人、従業員のおばさんが出てきた。
「どうしたの?」
「ほら見て、このカバンすごくいいでしょう?ポケットもたくさんついてるし」
「あらホントね〜」
この旅に備えて少し小さめのカバンを買ったのだが、まさかこんなに誉められるとは思わなかった。

〜取り寄せかあ…〜
普通のスーパーで買ったので、こっちでもあると思いますよ〜と言ってみたが、おばさんは「ないない」と強く否定。最終的に「取り寄せかしらね〜」とまでおっしゃって、去っていかれた。残っていたもう1人のおばさんに、南蛮船来航の地までの道をきいてみる。すると私が持っていた地図を借りて、別の人に訊きに行って下さった。なんだか複雑な道なのだろうか。

〜もしかして遠い?〜
数分後戻ってきたおばさんによると、ここからだと少し歩くらしい。
「この道をちょっと行くと、銀行がありますから、そこを右に曲がれば行けると思います。もう1回、人にきいてみて」
とのこと。お礼を言って、行けるところまで行ってみることに。なんだか遠いような言い方だったけど、どのくらいかかるんだろ。荷物を預かってもらえるそうなので、お言葉に甘えて置かせてもらうことに。ありがとうございます、助かった〜。

〜ついたついた〜
言われた通りに銀行の手前の道を右に曲がり、静かな住宅街の中の細い道を歩いていきます。途中、家の中から念仏が聞こえてきた。ちょっとびっくり。クリーニング屋さんの仕事ぶりをチラッと見学し、さらに行くと、島鉄の踏切。それを越えてさらに進むと、突き当たりに「南蛮船来航の地跡」の案内板があった。右に曲がると視界がパッと開け、目の前に公園が広がっている。「南蛮船来航の地跡」は、その公園の片隅にありました。

〜おばさんありがとう〜

南蛮船来航の地跡 南蛮船来航の地跡。
昔はここまで海が来てたんですね

ちゃんと着いてよかった〜。道を訊かなかったら、確実にたどりつけなかった。解説板があり、反対側に机みたいな四角い石がある。なんだろ、これ。上にポコポコと握りこぶしくらいの穴があいてる。コップを置く穴?とか考えてみたが、時間もないので、そろそろ出発しないと。ヴァリニャーノはここに来て、何を思っただろう。きれいな所だと思ったかな。

〜フェリーではしゃぎすぎ〜

口之津駅前の人形 口之津駅前で見送ってくれた人。

フェリー乗り場に戻ると、すでに出発時間の3分前。危ない危ない。切符を売っていた窓口のおばさんに「すぐ乗ってくださ〜い」と言われ、急いで乗り込む。客室は階段を登るらしい。ひゃ〜、こ、こわい…狭い階段で、はじっこにあるので海が見えておそろしかった。客室は室内もあったけど、せっかくなので外に出て海を見ていることにした。こんなにわくわくすることはないと思ったのに、他のお客さんはみんな室内。きっとみなさん乗り慣れてる人なのだろう。室外席をウロウロしていると、すぐに出航。わ〜、やったやった!

〜はじめての渡海〜

なんばん大橋 出発してすぐ、なんばん大橋。

ちょっと強めの気持ちいい風が吹いてくる。水しぶきも飛んでくる。こんなにはしゃいでしまうわけがわかった。私はフェリー2回目だったのだ。初フェリーは小学校の修学旅行、箱根の芦ノ湖で。本当は海賊船みたいなのに乗りたかったのに…。というわけで、海を船で渡るというのは初めて。海って広いんだねぇ…今さらながら、そんなことを思ってしまった。この広い海を渡っていった使節は、ものすごい勇気がある人たちなんだなあ。しかもこんなにグングン進む船じゃないし。

フェリーからのながめ フェリーからのながめ。
遠くに口之津に向かうフェリーが見えます

〜そういうことは、あちこちにちゃんと書いておいて下さい〜
30分ほどして、天草の鬼池港に到着。熊本初上陸!しかしいきなり、フェリーから降りる時は右側通行しろと注意される。だって知らなかったんだもん。怒られないように、おばあさんの後ろにくっついて歩いていく。フェリーから降りると、目の前に天草四郎の像が。わ〜〜、四郎だ!私は天草・島原の乱にはあまり詳しくないが、なんか感動。

鬼池港、天草四郎の像 鬼池港で出迎えてくれた人。

〜よろしくお願いします〜
ホテルの車は、もう迎えに来てくださっていた。「今日はよろしくお願いします」と挨拶。ベテランな感じのおじさんだった。この人に任せておけば何も心配いらないぞ。しかしこの時、はっきりと行きたいところを伝えておくべきだった。後悔するのはまだまだ先。

〜白波について〜
まずは本渡市の天草切支丹館に行ってもらえることに。
「今日は船が揺れたでしょう」
とおじさん。私は海のフェリーは初めてなので全くわからなかった。おじさんによると、海に白波が立っているので少し荒れているとのこと。ホントだ!波が白い!ちょっと考えればわかりそうなことだが、白波は水しぶきが上がっているということだ!どうでもよさそうなことに感動。車はあっという間に本渡市へ。

〜本当にゆっくりしちゃいますよ〜

天草切支丹館建物 かわいらしい建物の天草切支丹館。

丘を登り、車は天草切支丹館の前で停車。あー、なんて楽なんだ。
「ゆっくり見てきていいですよ」
とおじさん。私の場合、本当にゆっくりして出てこないのをご存じないので、余裕の発言だ。建物の前にまたもや天草四郎の像。鬼池港の四郎像はドーンとして堂々としている感じだが、こちらは等身大四郎さんという感じ。写真を撮り、いよいよ建物の中へ。

天草切支丹館にある天草四郎像 等身大四郎さん。

〜五足の靴こんにちは〜
窓口の職員の方がいい感じで、こちらもなんだか嬉しい気分。うちの地元の図書館職員も見習えってんだー。あ、ただのグチになってしまった。どうでもいい図書館職員の話は置いといて、二階の展示室へ。階段の途中の壁に、五足の靴のみなさんが書いた詩がはってあった。五足の靴の5人は、与謝野鉄幹以外みんな私と同じくらいの年なんだよね。私は文学史に詳しくないのでいまいちピンとこなかったが、なんだか親近感。特に木下杢太郎さんは使節についての史料を訳したりしておられるので、ここに来てまたお目にかかれて嬉しかった。

〜ちょっとガッカリ…〜
階段を登ると、正面にあの有名な陣中旗があった。きっと誰もが一度は教科書で見たことがある旗。残念ながら、今展示してあるのはレプリカなんだって。レプリカって、どこまで忠実に作ってあるんだろう。シミや縫い目もちゃんと本物と同じように作ってあるのかな。ちなみに殉教祭の時には本物が出るみたいです。

〜目玉の本〜
ここの展示は時代ごとに分かれていて、順を追って見ていけます。意外だったのは使節のパネルもあったこと。てっきり天草・島原の乱の資料ばかりかと思っていたので、嬉しかった。ここで気になったのは昔の眼科専門医の本。目玉が描いてあるの。昔も目専門の医者がいたというのはなんだか驚きでした。あと気になったのは、見るたびに感心する隠れキリシタンの遺物。逆さマリア観音とか、大黒さまの像はここで初めて見ました。大黒さまの像は、俵に十字が彫ってあるのを拝むんだそうです。

〜し、知ってましたか!?〜
天草四郎ってお歯黒してたそうですよ。本日一番のびっくり。おじさんを待たせているので1階のショップには寄らず、すぐ車に戻った。でも見ておけばよかった…おもしろそうな本があったみたい。
「下の方は見なくていいですか?」
おじさんお気遣いのお言葉。
「あー、行っちゃっていいです」
私は今日1日で行きたいところを全部まわれるか不安だったので、時間を優先させることに。しかし次は予想外の場所に。

天草切支丹館からのながめ 天草切支丹館がある丘からの眺め。

〜えええ〜
「ここ、ちょっと寄ってみましょうね」
おじさんに言われてやってきたのは丸尾焼きのお店。う〜ん…焼き物そんなに興味ないんだけど…
「お昼どうしますか?」
「あ、私は大丈夫です」
食べるの遅いから、それで時間を使いたくないのだ。そんなにお腹も減ってないし。
「じゃあ20分か30分くらいいいですか?私そのへんで済ませてきますので」
ああ、そういうことか。私はお店の中をぶらついて時間をつぶすことに。こんなことなら、最初に綿密な計画を立てておくべきだった。ここでお昼をとって下さい、とか言っておくべきだった。イヤな客になってしまうけど。

〜蚊がいた!〜
しかしこのお店、結構おもしろかった。形の可愛い湯飲みがあったので、自分用に購入。家族に買っても誰も使わないしなあ。外に出ると、まだおじさんは来ていなかった。すぐわきの水路沿いにベンチがあったのでそこでひと休み。向かい側の家で、外にテーブルと椅子を出しておしゃべりしている人がいた。今日は天気がいいから、気持ちよさそう。こちらまでなごんでいたら、蚊に刺された。

〜使節のみんな、気弱な私を許して下さい〜
しばらくして、おじさんが戻ってきた。次は苓北町の物産館に連れていっていただきます。志岐城跡に行きたいと申し出たのだが、
「何も残ってないですよ」
と行きたくなさそうなご様子。
「あ、じゃあいいです…」
こんな時に気弱な自分が情けない。天草コレジヨ館に行ければそれでいいや。車中、イルカウォッチングの話になる。イルカは頭がよく、海に落ちた漁師さんを助けたりしたことが何回もあったそうだ。その流れで、通詞島を車で一周してくださいました。ここの街灯、イルカの形なんですよ!可愛い!
「イルカって昔からいたんですかね?」
「昔からいたみたいですよ」
私は何百年も昔のことをきいたつもりだったが、おじさんはどうだったのだろう。

〜車中見学〜
あ、おっぱい岩!!心の中で密かに大騒ぎ。国道324号線を走っていくと、海沿いに「おっぱい岩」の看板。行く前に苓北町のホームページで存在を知り、ちょっと見てみたかったのだ。車の中からでもちらっと見えました。なんとも不思議な形だ。おじさんはモノがモノだけに、何も教えてくれなかった。

〜おみやげタイムです〜
無事に苓北町物産館に到着。わりとこじんまりした建物で、店内には誰もいなかった。私はカゴいっぱいに海産物やらおせんべいやらを持ってきて、お店のお姉さんに送っていただけるよう頼んだ。かわいらしい感じの丁寧なお姉さんで、こちらも気持ちがいいです。途中、別のお客さんが来てテンテコマイになってしまい申し訳なかった。ここは天草の海産物がたくさん。私はタコが好きなので、タコばかりたくさん買ってしまった。他にも海草とかふりかけとか、おいしそうなものがたくさんありますよ。

〜次も予想外の場所〜
「あのあたりが志岐城の跡なんですけどね」
おじさん、いちおう教えてくださいました。大きな火力発電所を通り過ぎて、車は富岡城跡に向かっている途中。例のごとく、また断りきれなかったのだ。せっかく案内して下さってるのに、「行かなくていいです」なんて言えない…。
「山ですね…」
志岐城跡は遠くから見ると山だが、今は神社になってるようですよ。このあたりのどこかに、志岐の画学舎があったんだなあ。私がセミナリヨの生徒だったら、画学舎に進みたいなあ。絵描くの好きだし。オルガン作りも楽しそう。

〜すでに不安が胸をよぎる〜
富岡城跡は、ただいま工事中らしい。でも城跡に富岡ビジターセンターという建物ができていて、すでに開館しているとのこと。おじさんは駐車場に車を止め、
「時間とって見てきていいですよ」
と、一言。はあ…どうもすみません。あとにまだ行きたい所が残っているのだが…時間をとって大丈夫なのか?それとも私が思っているより、時間をかけずにまわれるということなのだろうか?郷に入れば郷に従え…おじさんに任せておけば大丈夫なのだろう。答えを出した私は、とぼとぼ古い石段を上がっていく。

〜道なき道〜
山の頂上らしき場所についた。石垣があるが、どうやら今いる場所は入り口側じゃないみたい。なんだろう、ここ。もう少し先に真新しい建物が見える。あれがビジターセンターかも。とりあえずあそこを目指そう。しかし、明らかに道がない。私は草むらを歩いていた。すぐわきは崖みたいな坂になってる。こ、こわ…っ!やっと整備されている道に出た。転がり落ちるかと思った。少し登ると城郭風のビジターセンターの建物があった。眺め最高!がんばって登ってきてよかった。

富岡城からのながめ 富岡城から天草下島方面を臨む

〜使節のことを大事にしてくれてる〜
富岡ビジターセンターは、天草の自然の特徴や歴史がパネルで展示してあります。妙見浦にあるような穴のあいた岩のでき方とか、砂州のでき方とか、なかなかおもしろい。そしてなんと、ここにも使節のパネル!天草の人は、使節のことを大事にしてくれてるなあ…そんな気がした。なんといっても、天草版だしね。教科書に載ってるもん。ただ、ほとんどの人は伊曽保物語などの天草版と、使節が関係あるなんて知らないと思う。私も最初は知らなかったし。意外なところでつながってたりするのも、歴史のおもしろい所ですな。

〜楽しみは自然破壊なんです〜
室内の一角に、貝殻で飾りを作ろう!というようなコーナーがあった。机と椅子があって、決められた日に教室が開かれるみたい。おもしろそうだなあ。そこには貝殻やビーチグラスで作った亀やカニが飾ってあって、見ていてとても楽しい。机の上に、貝殻が自然に返るまでの図も展示してあった。
「このように、貝殻は自然にとって大切なものです。必要以上の貝殻を持ち帰らないようにしましょう」
…って、私のことだ!す、すみません…知らないうちに自然破壊してた。毎年こちらに来るたびに浜遊びを楽しみにして、いつもひとつかみ分くらい、小さな貝殻やビーチグラスを持ち帰ってしまっていたが…これからはなるべく控えます。

〜あくびしてると飲んじゃいそう〜
ここの一番奥に、3D映像で海の中の様子が見られる大きなテレビがあった。専用のメガネをかけて見る。うわ〜、魚たちが飛び出して見える!すぐ目の前にいるみたい。水の中の藻屑みたいなのもちゃんと立体的になってて、口を開けると入ってきそうですよ。ここで、元の映像がどうなっているのか気になった私。メガネをはずしてみた。なんだか、ただブレてるだけの映像みたい。でもメガネをかけると飛び出してくる。これ誰が考えたんだろう、素晴らしいことを考える人がいたもんだ。

〜ひとくちメモ〜
ビジターセンターの職員のおじさんに挨拶して、外へ出る。ここのおじさんも優しそうな初老のおじさんで、挨拶しただけだったけどなんだかいい気分。階段を下っていくと、ホテルのおじさんが歩いて迎えに来てくれていた。やっぱり入り口が違ったそうで、整備されている道の方に車をまわしてくれてました。ここ富岡城は、天草四郎ら一揆軍が攻め入った場所だとか。でも守りが堅くて落城しなかったため、四郎たちは原城にこもることになり、結果的に乱を早く終わらせることにつながったそうです。

〜ええっ〜
車に乗りこみ、下島を南下。次は河浦町まで行ってもらいます。
「ホテルの方を通りますので、一回降りてチェックインしますか」
ええっ…そんなことしてる時間はあるのか?富岡城で思いのほか時間をくってしまったため、すでに余裕がなくなってるような…。
「いえ、いいです。行っちゃって下さい」
日本語のなんともあいまいなところ。あれよあれよと言う間に、車はホテルへ。私、行かなくていいって言ったつもりだったんだけど。まあ、どうせ10分くらいだから行っても行かなくても同じだっただろう。

〜田舎っこなので〜
チェックインを済ませて、すぐ出発。山の中の道を通っていきます。
「海沿いの道は旧道なんですよ」
とおじさん。へぇ、そうなんだ。こっちに国道ができたので、他の町へも時間をかけずに行けるようになったそうです。山の中だから、やっぱりトンネルが多くて暗ったい。途中、大江天主堂が見えた。なんだか家畜のにおいがする。
「このあたりは養豚場がありましてね。ちょっとこういうにおいがするんですよ」 おじさんちょっと申し訳なさそう。
「大丈夫です、うちの方にも養鶏場があるので慣れてますから」
たまに風に乗って、自宅の方にもにおいが流れてくるのだ。ついでにうちの近くの畑に牛糞をまいた人がいて、その時はさすがにきつかった。それに比べたらこんなにおい可愛いもんだ。

〜史料館は開いてない〜
車はいよいよ河浦町へ。もしかしてこれが羊角湾かな?広い川みたいな穏やかな海が続いてる。細い路地を進み、崎津天主堂へ。天主堂の前の路地では、魚の販売が行われていた。さすが漁師の町。きっとおいしいんだろうなあ。とれたてを食べたことがないので、私はまだそのおいしさを知らずにいるけど。路地を左に曲がるとすぐ、天主堂の建物が姿を現した。堂々としているけど、この町に似合ってる。落ち着いたグレーの天主堂です。ここには昔庄屋さんがあって、あの勝海舟も泊まったんだとか。その庄屋さんでは絵踏みも行われてたんだよね。ここには隣に小さな史料館があり、まずはそちらに行ってみたが、残念ながら閉まっていた。

崎津天主堂 ひょっこり現れる崎津天主堂。壁の模様が好き

〜魚は売り切れですか〜
天主堂の中に入ってみる。天井が高く、とても明るい。両脇に畳が敷いてあって、椅子が並べてあります。ステンドグラスからの光がとてもきれい。しばらくじっと見ていたが、時間がないのを思い出して立ち去ることに。小さな庭には池があり、きれいなマリア像が立っていた。さきほどの路地では、販売を終えたおばさんが片付けをしている。挨拶すると、にこやかに挨拶を返してくれて嬉しかった。

〜あきらめ続出〜
車に戻ると、おじさんも散歩に出たらしくいらっしゃらなかった。近くに小さな公園があり、トイレを借りる。クモの巣なんかを想像していたが、手入れがされていてきれいなお手洗いでした。本当はこの後ろの山を登って展望公園に出てみたかったが、やっぱりそんな時間がないのであきらめることに。

〜いよいよ天草コレジヨ館〜
おじさんも戻ってきたところで、次はいよいよ天草コレジヨ館です。こちらは思っていたより広々としています。入館券を買うと、職員のおばさんが
「2階で20分くらいのビデオが見られますが、どうしますか?」
と尋ねられた。確か使節のビデオだったはず。
「あ…ぜひお願いします」
すると、2階のすみにある上映室に案内してくれた。ここ、2階は図書館になってるんですね。上映室はとても広くて、椅子がたくさん並んでる。私は普通のテレビでビデオを流すだけかと思っていたのでちょっと面食らっていた。
「すみません、すぐ涼しくなりますから」
しばらく上映がなかったのか、部屋の中は少し暑かった。職員の方はクーラーをつけに行ってくれたらしい。
「あ、いいですよこのままでも」
1人貸し切り状態で、河浦町とヨーロッパの交流についてのビデオが始まった。

〜感心感心〜
このビデオ素晴らしい!やるなー、教育委員会。涙が出てきた。いいなあ、また見たい。ヨーロッパの映像なんかも盛り込んであって、内容が濃い。上映が終わり、下に降りる。階段の途中に、子どもたちがここの活版印刷機で印刷した時の様子が写真で紹介されていた。いいなあ、活版印刷…私も印刷博物館でやったけど、その時はイギリスかドイツ製の、小振りな新しい活版印刷機だったんだよなあ。私はブドウ絞り機タイプのでやりたいのに。

〜私の道が開ける時が来るのか〜

グーテンベルク印刷機 見て下さい、素晴らしい印刷機です

天草五人衆についての展示や、船の模型の展示のあと、一番奥の部屋へ進むと、いよいよ活版印刷機の登場。きれいな木の色の印刷機…。コレジヨの名簿もあり、使節4人の名前とドラードの名前がちゃんと書いてありました。おお…この天草の土地に、みんないたんだね。私と同じくらいの年齢で、ここで暮らしていたんだね。私はなんだかアグスチーノが気になった。1人だけ消えてしまったようで、寂しい。使節にしろ、五足の靴にしろ、みんな私と同じくらいの年齢で自分の道を見い出してて偉いなあ…。私はどうなんだろう。いちおう会社員だけど、なんだか疑問ばっかり。

〜ここはまるで夢のよう〜
印刷機のまわりのガラスケースには、使節ゆかりのものがたくさん。楽器に、服に、天草版の複製。服は大学生の方が作ったそうですよ。素晴らしい。私は天草版の写真まで撮ってしまったのだが、よかったのだろうか。ここは夢のようだわ…。また来てもう一度ゆっくり見たい。

〜再びお許し下さい〜
車に戻ると、おじさんは待ちくたびれていたご様子。ずっと無言のまま、なんだか険悪な雰囲気になってしまった。す、すみません…このあとコレジヨ跡に行って下さいと、よっぽど言おうかと思ったのだが、ついに言えず。はあ…どこまで気弱なんだ…。この信号を左に曲がったら、もう戻れない…曲がってしまった。さよならコレジヨ跡。使節のみんな、情けない私を許して下さい。

〜速度計なんか見なければよかった〜
車はかなりのスピードで大江天主堂へ。おじさんも怖いし、車のスピードも怖かったので一体何キロ出てるんだ…!?と思ってメーターをこっそり見ると…95キロ???え?見間違いか?ここ高速??お、おそろしい…おじさん、かなり急いでいるのだろうか。すみません、私がトロいばかりに…。この時、私の頭は後悔でいっぱいだった。やっぱりバスにすればよかった。小娘が1人でホテルの車を使い、案内してもらうなんてナマイキだったのだ。そうだったのだ。少ないバスを駆使して、がんばってまわればよかったのだ。若いうちの苦労は買ってでもしろ…ハァ…リベンジ決定だ。

〜おばちゃんパワーをください〜

大江天主堂の聖母子像 子どもたちがたくさんいる聖母子像。
ガラスケース入り。

丘の教会、大江天主堂に到着。おばちゃん三人組の観光客があとからやってきて、ガラスケースに入っている聖母子像を撮影していた。はあ…あのくらいの勢いがあれば、今日行きたかったところ全部まわれたかも…そればかり考えてしまう。おばちゃんたちは教会の裏の方へまわっていった。私は天主堂の中へ入ってみることに。扉を開けた。

〜ほとんど何も見ず〜
……
3秒。足を一歩踏み入れて、すぐ閉じてしまった。中にシスターの方がいたし…これ以上おじさんを待たせて不機嫌にさせるのもなあ…。私が見たのは、色使いが可愛らしい天主堂の天井と、物静かそうなシスターだけだった。

大江天主堂 最後にパチリ。逆光だあ

〜やっぱり〜
丘のふもとのロザリオ館にも行きたかったのだが、すでに閉館15分前。やっぱり寄ってもらえず、車はどんどん遠ざかる。
「景色がいいところがありますから、ちょっと寄ってみましょうね」
ハア…ありがとうございます…本当はもうホテルに帰り、早く1人になりたかったのだが…親切心を断ることもできず、そのまま連れて行ってもらう。

〜バスがもう少しあればなあ〜
あ、海水浴場だ…山の上からちょっと見えた。もしかして白鶴浜かな?景色がいい所って、ここ?しかし車はもう少し上に登っていく。
「ここです」
車から降り、おじさんのあとについていく。どうやら十三仏崎にやってきたみたい。茂みになっている、少し高い場所に登ると…
「うわーっ」
目の前には大海原が広がっていた。ここの一角は展望台になっていて、きちんと整備されてます。あと30分もすれば、日没という時間。あー、1人で来たかった…もしくは気の合う仲間…。でも1人じゃ来ようとも思わなかった場所。何しろバスが少ないし。右側にはガイドブックにも載っている、あの穴のあいた岩が見えました。

妙見浦 妙見浦。ガイドブックにも載っている場所

〜トンビですか〜
頭の上に、トンビが8羽くらいクルクルまわってる。
「…あれはトンビですか」
「トンビですねー」
頑張って話しかけたのに、話が続かなかった。むぅ。帰ろうとしていたら、バイクに乗ったお兄さんがカメラ片手にやってきた。写真家の人かな。私もバイクにでも乗れればよかったんだけど。車の免許はあるけど運転得意じゃないし。バス移動は好きだけど、こういう時は自分で運転できた方がいいですね、ホント。

〜やっとホッと〜
今度こそホテルに帰ってきた。ホテルで待ちかまえていた別のおじさんが、車のドアを開けてくれた。ひぇっ、どうもすみません。お金持ちみたい〜。こういうことに慣れてない庶民な私。今日1日付き合ってくださった運転手のおじさんにお礼を言って、ホテルの中へ。なんだかんだ言って、いろいろ案内して下さりありがとうございました。自分では行かないようなところにも行けておもしろかった。私の背後では、
「車片づけますか」
「いや、まだ行くから」
という会話がされていた。やっぱりこのあとにも予定があったのか。だから車内であんなにピリピリした空気に…申し訳ない。なんだか心の中がドンヨリ。

〜お、おばちゃーん〜
部屋まで案内してくれるおばちゃん登場。
「今日はいろいろまわられたんですか?」
とにこやかな顔で尋ねられた。
「はい、車でまわってもらいまして」
はあ…なんか癒される…。ここで初めて、今までずっとちぢこまっていたことがわかった。おじさんのご機嫌をうかがい、ビクビクしながら車に乗っていたのだ。やっぱり私みたいなのが1人きりで観光なんて頼んじゃいかんなあ。今日も山側の部屋に案内され、一息つく。やっぱり山側。立場の弱い個人旅行者。

〜耳がキンキンですよ〜
あと10分で日が沈んでしまう。いそいでホテルの展望台へ。団体旅行者らしきおじさんおばさんたちがちらほら集まってきてる。海からの風はちょっと冷たいけど、気持ちいい。突然、隣におばちゃんたちがやってきた。
「あ〜、青い玉がいっぱい見えるわ〜」
「太陽の中から出てきよる〜アッハッハッハ!」
どうやら残像のことを言ってるらしい。ホントだ、気にしてなかったが、私も青い玉が見える。おばちゃんすごい。でも耳元で大声でしゃべるのはちょっとやめてほしいです。

〜なんてことを言うんだ〜
日もだいぶ傾き、展望台は大騒ぎ。あともう少しで海…という時に、なんてことでしょう、雲があったのです。太陽の下の部分がギザギザに欠けてるよ〜…。展望台は「あ〜…」「あらららら…」と残念がる声でいっぱい。こんなに人間がいるけど、みんな思ってることは同じ。海に沈む夕日が見たかったのだ。雲があるなんて全く気がつかなかったなあ。夕日が沈みきると、おばちゃんたちは
「やっぱり山に沈む夕日の方がいいわねぇ」
などと言い残し、去っていった。私は海と空の色をしばらく眺めていた。

ホテルから見た夕日 みんなで残念がった夕日。
でも素晴らしい。

〜これでもか〜
部屋に1回戻り、レストランへ。夕食をいただきます。さすが天草、海のものがたくさん。次から次にこれでもかー、これでもかーと出てくる。お刺身に盛りつけてあった伊勢エビの頭が途中で持っていかれ、しばらくしておみそ汁に入れられて再び参上。おお、おかえり…。豪華な夕飯を前にすると毎回思うのだが、これの半分の量にして値段も安くしてくれないかなあ。エビが一匹くらいなくてもいいから。私は人より食べるのが遅いので、すぐお腹いっぱいになってしまい食べられる量も少ない。だからたくさん出てくるといつも残してしまうことになり、大変申し訳ないのだ。まあ、夕飯断れば済む話だけど。でもネットで見たどこかのホテルは、少なめの夕飯があった気がする(子ども用かな?)。宿泊施設の今後に期待。

〜いつのまにか、すさんでいたのさ〜
満腹状態で部屋に戻り、日記の時間。最近は普段の日も日記を書かなくなったせいか、文章が支離滅裂。学生時代に比べると、毎日同じことの繰り返しで日記に書くことも思いつかない。残業した日だと倒れるように寝てしまうので書けないし…。私いつからこうなったんだろう。これからはまた、日記を書くようにしてみようかな。なんかすさんでいた自分に気がついた。

〜ジリジリな夜〜
お風呂に入ってきてから、もうひとふんばり。今日天草コレジヨ館で撮らせていただいた天草版の整理をしておく。PCサイトが見られる携帯を買ったので、自分のサイトを開いて確認。わ〜、けっこう抜けてるのがあった。ドラードごめんよぅ…。帰ったら追加しておこう。すでに真夜中、眠りについたあとも暑くて、クーラーをつけるために何回か起きてしまうというジリジリした夜でした。

+3日目へ+(天草下島〜熊本空港)

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