ドラードの探検記 プラトリーノの別荘編

●館の様子
 プラトリーノと呼ばれる館は五階建てである。一階ごとに14室あり、各部屋ごとに豪華な寝台、小卓、椅子があって、見事な壁布が飾ってある。

●庭の様子
 館の周囲には樹木を植え込んで森のようにしてある広大な緑地がある。さらに爽やかで涼しげな雰囲気を加えるため、水量の多い噴泉が20あまりある。どの噴泉にも人智の限界を超えるような発明と工夫を見ることができる。あるときは顔に、あるときは背中に、またあるときは両足の間に噴水の筒が向けられる。また上の方から雨水のように降ってきて、これを避けて逃げようとするところでまた別の隠れている仕掛けに引っかかって逃げ出せないようなことも何度かあった。

●噴水について
 噴水は大理石や青銅で作られ、魚や水中の樹木が優れた技巧で作られている。多くの車輪がその中で回転している。車輪のうちには二つの扉によって分かれているものもある。一方の扉から入ると上方に扉が開き、水星の人をかたどった青年(ヘルメス?)がそこから現れ、コルネットを吹く。すると、しばらくして扉が開かれ、魚に乗った水の女神ガラテヤが現れ、出口の扉がある泉の端まで泳ぎ、その間別の二人のニンフもついていく。しばらくそこにとどまって、閉じている門まで引き返してくると、門が開いて、ガラテヤとニンフはそこに戻って行く。これは全て人の創意と水の力によるものである。
 また別の噴水には両手にラッパを持って吹き鳴らす一人の天使がいる。その音にともなって、噴水のあたりに横になっている蛮人が両手に持っている鉢を高く掲げ、泉から吹き出ている水を鉢からあふれるくらいに汲み、水が満ちると両手で鉢を捧げる。そこに蛇がおり、頭と首を傾けて、鉢の水を一滴も残さず飲む。こうして再び鉢に水をくみ、蛇に飲ませるということを繰り返す。
 また別の噴水では、水が吹き出すと、大きなトカゲが泉から出てきて、同じ泉にある岩山に隠れる。
 また別の噴水では、片手に球を持った少年がいて、すばしこく歩み、球面の多数の水口から水を吐き出せば、同じ泉にいる鴨が二羽、走りながらそれを飲む。
 他の噴水では、大きな鴨が一羽いて、泳ぎながらくちばしを入れて水を飲むのみだが、あとで周囲の人々にその水を霧にして吹きかける。
 また別の噴水では、一方にサテュロスが一人、両手に7つのフルートを束にして持ち、もう一方にニンフが一人、半身を水中に浸している。ひざまずいているサテュロスは起立し、フルートを口元に持ち上げ、爽やかな音を奏で始める。その頭上で婦人2人と男子2人が踊る。よい拍子で踊りが続けられる。
 このような噴水や多くの泉はすべて、下方の館の内にあり、様々な仕掛けをそなえた人口の岩礁でできている。館と噴水で5万クルザードあまりを費やして作られた、高価なものである。
 館の頂上と周りの壁にも至るところに水の管の仕掛けがあり、雨と思われるように、筒口から水が噴き出し、急に降ってくる巧妙な構造になっている。
 上方の館へ昇っていける階段が二つ、両側にあって、ここでも非常な量の水が噴水口から吹き出される。まるで内部に雨が降ったかのように、大人二人分の背丈まで届くほどの勢いで噴出する。
 一方には長い廊下があって、上部に1500あまりの噴水口が設置してある。この廊下を通過するときには、まるで天から雨が降ってきたと思うほどである。
 他の泉には、獅子一頭と馬一頭が支えるアーチの門がある。その下に女4人、男1人がいて、乳房や様々な部分に水管を配置し、アーチそのものにも1000あまりの噴水口がある。
 庭園には高い岩の上に作られた泉がある。そこにはニンフが9人、いろいろな楽器を演奏しており、アポロがその指揮をとっている。この噴水はまだ完成していない。
 また、他の泉には他と比べ物にならないくらい大きな巨人像がある。頭部の空洞には大人12人が入れるくらいである。この巨人は大きな池に落下する水を常に放出している。

●庭にある鳥かごについて
 この庭園には鉄の棒で作られた鳥かごがあって、地上の大きな洞穴の上に置かれている。内部には様々な種類の小鳥が棲んでおり、その歌で優しい調べを奏でている。小鳥のために多くの木や前に述べた噴水にも劣らない、美しくて価値の高い泉も設置されている。鳥かごの長さは120パッソ、幅は30パッソあって、5000クルザードの価値がある。



(2014.06.29 作成)


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