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使節の旅 1583年1月



1月4日(金)】 風がおさまる

 ついに風はおさまり、海も穏やかになった。しかし、この地域の海は岩礁が多く、使節の乗った船も岩礁に乗り上げ、難破しかけた。司令官はなす術がなく、パードレのもとにきて告解を行い、祈ってくださいと頼んだ。すると、4・5時間して突然逆風が起こり、岩礁を避けることができ、難破を免れた。

 その後は穏やかな航海が続き、ついに陸が近づいてきた。みんな喜んで船上から陸を眺めていたが、その時、悲惨な光景が眼前にひろがった。荷物や破壊された箱の破片が海上に漂っていた。それは暴風のために難破した船の残骸で、しばらく行く間に、この残骸は先のポルトガル船のものだということが判明した。船長が使節の乗船を提案してくれた、あの大きなポルトガル船である。この船はマラッカからわずか30マイルのところで、岩礁に衝突して破壊された。貨物は海にのまれ、また海岸の野蛮人に掠奪された。乗客は板につかまったり、救助の小舟に助けられたりして、ほとんど皆無事であったが、悲惨な状況だった。ヴァリニャーノに言われてポルトガル船に乗り込んでいたイエズス会士2名も、長く海上で漂流していたが助け出された。
 使節を乗せた船は遭難者を救助し、回復させるためしばらく同所に留まることになった。


1月7日(月)】 再出発

 遭難者の救助が終わり、使節の船は再び動き始めたが、航海士が未熟で、干潮に移ろうとしているときにシンガポール海峡を渡ろうとしたため、この船もまた岩礁に乗り上げ、満潮で船が浮き上がるのを待つしかなかった。
 そんな中でも、使節の目を楽しませるものがあった。この海峡では、マライと呼ばれるモロ人が生活しており、ポルトガル船が通るときに競い合うようにやってきて、魚や果物、自分たちが織っている織物などを出して、陶器や布と交換していく。使節はその様子を見て、驚き、喜んだ。


1月27日(日) マラッカ到着

 船はついにマラッカに入港した。ここでも司教、司令官、市民から大きな親愛の気持ちをもって迎えられた。




(2014.1.19 作成)


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