2月20日(火) 日本を出航
使節はポルトガルの紳士イグナシオ・デ・リマの船に乗り込み、長崎から出航した。リマは使節が乗ることを非常に光栄なこととし、自分の部屋を使節に与え、自分の食料までも使節に提供したいと思っていた。
船は北風を船尾に受け、はじめの2日は順調に進んだ。しかし、風は次第に強くなり、ついに暴風となった。船は大きく揺れ、海上を航行しているのではなく、宙を飛行しているように感じられた。そのため身体を手すりや他の固定してある木に縛り付ける必要があった。また食事もとることができず、めまいを感じ、海の上にいることに慣れている水夫まで苦しんだ。
しかしヴァリニャーノはほとんど酔うことがなく、使節たちを励ましていた。使節の中でもミゲルだけは他の使節よりも元気で、彼らをからかっていた。
このような苦難は五昼夜続き、その間一瞬も目を閉じて眠ることができなかった。